「メガトレンド」を追いかけ、「5分後の未来を展望する」ことを理想します。
第1部 鉄鋼市況 Steel prices




韓国鉄鋼業の発展と競争力

1970 年代末までに韓国の鉄鋼業では,公営企業であるポスコが一貫製鉄所を有して半製品及び熱延鋼板,一部冷延鋼板を生産して鉄鋼業全体で圧倒的なシェアを握る一方で,主に条鋼類を生産する電炉メーカーと,冷延鋼板や鋼管をはじめ多様な鋼材を生産する単圧メーカーが補完する,「後発国型一貫生産体制」が確立した。

設備投資の自由化,更に 1980 年代後半の「三低景気」と呼ばれる好景気による鋼材需要の高まりを受けて,まずポスコが川下部門への進出を積極化させた。

1980 年代末から 1990 年代初めの住宅建設ブームによって建設資材用鋼材の需要が急増した。そのため 1990 年代前半に電炉メーカーは各社とも大規模な設備の増強に踏み切った。

1990 年代半ばに電子,自動車,造船等の産業が輸出を中心に生産を拡大し,鉄鋼需要の伸びは衰えを見せなかった。そうしたなかで,現代グループが高炉の建設に向けて動きはじめていた。

1995 年前半まで韓国経済は高い成長を維持していたが,1995 年末から急速に景気は下降局面に入り,鉄鋼材需要も大きく落ち込みをみせた。これは1990 年代前半に増設競争を繰り広げていた電炉メーカーを直撃し,稼働率の
低下と鋼材価格の下落に苦しむことになった。電炉メーカー全体の経営実績は 1996 年には赤字に転落し,1997 年には赤字幅が大幅に拡大していった。

韓国鉄鋼業は大きく再編されることになったが,再編の核となったのは現代自動車グループであった。

2000 年 6 月まですべての持株処理が完了し,ポスコは完全民営化された。

現代自動車グループは 2000 年代に入って高炉建設に向けて再び動き出した。現代自動車グループは分裂前の現代グループ時代から高炉建設に強い意欲を持っていたのに加え,現代ハイスコの冷延鋼板工場への熱延コイル供給をめぐって生じたポスコとの摩擦が建設への動きを加速化させた(5)。現代製鉄は2006年10月についに高炉建設の起工式を迎えるに至った。

現代製鉄は,2015 年までに年産 1200 万トン体制の構築を目指している。


鋼材がどのような部門で消費されているのか,部門別の鋼材出荷構造を日本,アメリカと比較しているのが表3である。ここからわかるのは,製造業向けや建設業向け出荷の比率が日米に比べ低く次工程用出荷の比率が非常に高いことである。これは,韓国では以前から工程間である程度の企業間分業が存在していたためとみられる。すなわち,熱延コイルを生産する高炉メーカーであるポスコと,ポスコもしくは海外から熱延コイルを調達して冷延鋼板や表面処理鋼板,もしくは鋼管を生産する単純圧延(単圧)メーカーの間にある程度の分業関係が成立してきた。そのため,統計上,同じ製品が熱延コイル段階で次工程出荷とカウントされ,更に冷延鋼板その他の形態で産業向けに出荷された際に再度カウントされるという問題が生じる。それを避けるために,次工程用出荷部分を抜いて再計算しても,以下の傾向が見られる。

第一に,製造業向けの比率は日米と比べて低い
第二に,製造業の中では造船向け及び電機電子向けが高いが,自動車が非常に低い

日米同様に,製造業において自動車産業が主要産業の一つであることを考えると意外な結果である。

第三に,販売(卸売)業者向け出荷はアメリカに比べれば低いが,日本に比べれば高い

表3については,上記のダブルカウント問題を含め,日米韓の間でのデータ整合性がとれているのか,更に検討する必要がある。


日本,中国,東南アジア,北米が主な輸出先である。2000 年以降の変化をみると,北米向けは減少,日本向けは横ばいなのに対し,中国,東南アジア向けが大幅に増加している。輸入は日本及び中国からが全体の 77%を占めている。



内需というより輸出メインでしょうか。





鉄鋼業からみた旺盛な中国の国内需要

鉄鋼業の場合、最も力強い下支えとなったのは建設投資であった。
とりわけ、住宅建設の役割が大きい。
中国の国内鋼材需要は建設部門が全体の5割、機械部門が2割弱、自動車・家電部門が1割弱という構造である。
貿易や直接投資の増加を機に中国の機械設備投資が加速度的に増加した一方、建設投資も同等のペースで拡大した。建設投資の特徴は、①都市部で実施されていること、②住宅建設のシェアが大きいことの2点である。

特記すべきはWTOに加盟した2001年以降の伸びである(図表5)。1978年から2000年(生産量は1億2,850万トン)まで生産量が4倍となったが、これには20年以上を要した。一方、2001年以降はわずか9年で4倍に拡大した。中国の鉄鋼業がアメリカを追い抜いたのは1993年であるが、その3年後の1996年には当時の世界一の粗鋼生産量を誇っていた日本をも上回った。近年では、2004年から2008年までの4年間で1.8倍に増加した。2009年の世界シェアは46.6%と他国を大きく引き離し、圧倒的な1位となっている。急拡大し始めた時期から判断すると、WTO加盟を機に
鉄鋼に対する外需が拡大したという見方と、機械の輸出が急拡大したため鉄鋼生産が大幅に増加したという見方が想定される。

鉄鋼生産の拡大をもたらしたのは旺盛な国内需要である。本稿でいう鉄鋼の国内需要とは、生産と輸入を足しあわせた総生産から、輸出を引いたものである。2008年の中国の粗鋼国内需要は4億トン超と、生産量の9割に達する。

中国国内の粗鋼需要は公共投資をはじめとしたインフラ投資が中心であることは広く知られている。自動車や家電の急速な生産増加も鉄鋼業の発展を支えたとの指摘が多い。

中国鋼鉄工業協会によると、2005年時点の鋼材消費量(国内需要)は建設部門が全体の51%を占める。機械部門は同15%、自動車部門は同3%、家電部門は同2%であった。

中国の建設投資の特徴は以下の2点と考えられる。
第1に、建設投資の多くが都市部で実施されている。2008年に企業、行政機関、個人が都市部で実施した建設投資は全国の86%にのぼる。

第2に、住宅建設が中心となっている。中国国家統計局の建設業統計によると、2008年に建設された建物床面積のうち、住宅は全体の60%を占める

旺盛な住宅投資をもたらした要因はなにか。
一つ目は、都市化である。改革開放以降、農村部から都市部への人口流入を背景に、上海や北京、深圳などの都市部の人口が増加し、2008年の都市部の常住人口は2000年比で1.5億人増加した(図表13)(注7)。このような都市部への人口流入により、都市部における住宅需要が拡大した。

二つ目は、都市部の厳しい住居環境である。中国国家統計局によると、2000年において都市部世帯の居住住宅の49.6%は浴槽のみならず、シャワーもなかった(図表14)。シャワーがある場合も必ずしも温水が出るとは限らない。また、洗面所が建物内にない、あるいは、複数の世帯で建物内のトイレを共同使用している世帯も全体の28.7%にのぼる。住宅に洗面所を設置せず公衆トイレを利用するのは公有制の影響であろう。共有トイレは築年数の古い物件でみられ、一つのフロアーに複数の世帯が間借りしている場合が多い。このような共有トイレには扉がついていないことも少なくなかった。炭・コークス、薪・草を燃料とするキッチンを使用している世帯が27.2%と、ガスが使用出来ない都市部世帯が3割弱であった。

以下の4点により都市部の住宅投資が引き続き鉄鋼需要を牽引するこれまでの構図は当面大きく変わらないと見込む。
第1は、都市化の進展である。国際的に見て中国の都市人口割合は低い。2008年の中国の都市人口割合は46%と世界の同50%を下回る。都市部と農村部に大きな経済格差が存在する限り、農村部から都市部への人口移動が続き、中国の都市人口割合は世界の平均水準まで高まっていくだろう。なお、中国政府は第11次5カ年計画において2006年から2010年までの農村部から都市部への人口移動を合計4,500万人と想定している。これは、1年あたり900万人という計算である。注目すべきは、これまでは上海や北京、深圳など沿海部に位置する大都市の人口増加が目立つが、今後はその流れが経済圏の広がりにより内陸部に位置する大都市の人口増加が目立つが、今後はその流れが経済圏の広がりにより内陸部に位置する中小規模の都市に広がると見込まれる(注8)。

第2は、戸籍制度の改革である。前述したようにこれまでも農村部から都市部へ人口が移動し、2008年の都市部の常住人口は2000年比1.5億人増加した(図表13)。この結果、都市部では都市戸籍を持たない者が多く居住している。たとえば、2007年の上海の常住人口は1,858万人と戸籍人口(1,379万人)を479万人上回った。2009年以降、深圳や上海など10の大都市において都市戸籍の取得条件を緩和し始めた。医療、教育、労働保険、就業、社会保険など多くの面において優位であるため、都市戸籍取得者は増加すると見込まれる。彼らは都市部で永住資格を手に入れると同時に、マイホームの購入を検討するだろう。

第3は、都市部の厳しい住居環境である。近年、都市部の住居環境は改善されてきたものの、依然として改善余地が大きい。中国国家統計局によると、2005年において都市部世帯の27.0%が平屋に居住している(図表14)。この多くは内陸部にて観察されるが、上海の市中心にもいまだ平屋で生活している世帯も見かけられる。また、バス・シャワーなしは全都市部世帯の40.4%にのぼる。洗面所がなく、共同使用している世帯は同21.6%、炭・コークス、薪・草を燃料とするキッチンを使用している世帯は25.0%である。今後も、所得水準の向上により、都市部の住居環境の改善に向けた動きが加速するだろう。

第4は、不動産価格抑制策としての住宅供給の増加である。2009年10 ~ 12月期の主要70都市の不動産販売価格は前年同期比5.9%上昇し、価格水準は金融危機以前の水準を上回った。住宅の供給増加は不動産価格の安定に貢献するため、政府の重点政策として進められると思われる。

住宅のみならず、インフラ投資も伸びる見通しである。例えば、都市化により地下鉄など都市インフラ整備が拡大するだろう。同時に、農村部と都市部をつなぐ鉄道などのインフラ整備も進むと見込まれる。加えて、4兆元の景気対策のうち中央政府が担う部分は1.18兆元であるが、2008年10 ~ 12月期に1,040億元、2009年に4,875億元、2010年に5,885億元の投資が行われる予定となっている。4兆元の景気対策は今後も建設向けの鉄鋼需要を支える見通しである。



中国の都市部の住宅は鉄鋼材を使っているんでしょうか。

これぞ中国流、住宅に錬金術あり

中国の不動産価格、3カ月連続で下落

大規模マンション型が多いということでしょうか。

イメージが湧きにくいですが、この建設っていつまでも続くんでしょうか。

遠からず終わりそうな気もするんですけど。




アジア鉄鋼業の特質 Q&A

Q:ちょっと待て。なぜ市場が国内に限られるのだ。それは、政府が高い保護をかけて輸入代替型工業化を進める場合だろう。程度の差はあっても対外開放を基調としてきたアジア経済発展のもとでは、市場を国内に限らず、輸出に求めることが可能だったはずだ。

A:ところが鉄鋼業の場合はそうではなかった。
まず一般論として、製品が巨大で重い鉄鋼は、今でも海上輸送費がコストを大きく左右する。そのため単価の低い建築用条鋼類などは、遠国輸出は難しい。条鋼類のメーカーは、国内が不況になると輸出ドライブをかけても採算があわないので、稼働率を落としてしまうことが普通だ。
次に、この数年間は別であるが、1970 年代から 2000 年代初頭まで、世界の鉄鋼業は過剰設備と価格の低迷に悩まされてきた。このため、後発国の鉄鋼業にとって、輸出による成長はますます難しかった。

Q:なるほどな。そうすると、繊維・縫製産業や電子産業の組立部門は輸出産業になれても、鉄鋼業はなりにくかったということか。

A:そうだ。ただし、2002 年以後は中国市場の急成長に引っ張られて価格が急上昇したので、輸出産業化が可能になっているかもしれない。台湾の単圧・めっきメーカーなどにはそうした動きが見られる。




第 46 回 供給過剰が続く東アジアの鉄鋼業界

日本の粗鋼生産はここ数年、1億トンを上回る水準を維持している。一方、内需は6,000万トン程度に過ぎず、生産量の4割を輸出している。内需の低迷に製造業の海外移転も重なり、今後も鉄鋼需要の大幅な回復は見込みにくい。

中国では2011年の粗鋼生産が6.8億トンに達した。過去10年間でみると、生産量が毎年5,000万トン拡大している計算になる。鉄鋼消費量も増加しているものの、需要の伸びは供給増に追いついていない。機動的な生産調整も実施しにくく、現在は1億トンの鋼材在庫を抱えていると推測される。これは内需の1割程度と言われる適正在庫水準を大幅に上回っている。この結果、中国も日本と同様、恒常的な鋼材の輸出国となっており、2011年は3,000万トンを超える輸出超過となった。

韓国の2011年の粗鋼生産量は6,800万トンにまで拡大した。韓国では鉄鋼を多く使用する造船や自動車産業が製造業の中核を担っているため、人口当たりの鋼材見掛消費量が1,000キロを上回っている。これは日本の2倍に相当する水準であり、世界でも突出して高い。更に、内需の伸びが鈍化しているにも関わらず、新たな高炉の稼働等により、この2年間で粗鋼生産量を2,000万トンも増やした。この結果、韓国も鋼材の純輸出国に転じ、現在は、日中韓の3国で日本の内需を上回る約8,000万トンの輸出超過状態にある。


それでは、日中韓の余剰生産分はどこに吸収されるのだろうか。中長期的にはインドに大きな期待が寄せられるが、当面は5億人の人口を要し、経済発展で先行するASEAN諸国が注目されよう。中でも、タイやベトナムは人口当たりの鋼材見掛消費量が100キロを上回ってきており、鋼材消費が急激に拡大する局面に達している。実際、足元のタイの自動車産業は好調だ。2012年1~8月の生産台数は前年同期比33%増の148万台に達し、新車販売台数と共に史上最高記録を更新する勢いである。

中国の余剰在庫の調整に要する期間やASEAN諸国における耐久消費財需要の本格的な普及時期を考えると、東アジアの鋼材需給ギャップが解消に向かうのは2015年頃であろう。それまでは、海外市場の獲得で激しい競争が繰り広げられ、鋼材や原料市況の上値も抑えられる状況が続くとみられる。一方、2015年以降の業界環境も楽観はできない。中国が新たに建設を許可した2カ所の1,000万トン級の高級鋼材基地が2015年に完成する予定であり、今度は日本が得意とする高級鋼材分野での競争激化が予想される






粗鋼生産量の国別ランキング
表中の粗鋼生産量の単位は百万トン。

世界 1413.6
中国 626.7
日本 109.6
インド 66.8
韓国 58.5
中華民国(台湾) 19.6
マレーシア 4.1
タイ 3.7
インドネシア 3.6
ベトナム 2.7



中国一国で世界の半分を生産してますね。

その他のアジアをひっくるめてもたかが知れている感じ。

東アジアの鉄鋼需要が大きいとして基本的に輸入、それも大部分中国からという事なんでしょうか。
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